不動産投資の金利上昇シミュレーションでは、借入残高に対して現在より高い金利を当てはめ、年間返済額・キャッシュフロー・DSCR(返済余裕度)がどこまで悪化するかを試算します。重要なのは「今の金利でいくら返済するか」だけでなく、「金利が1〜2%上がった場合でも手元に残るお金が赤字にならないか」を事前に確認することです。この記事では、金利上昇が返済額やDSCRにどう影響するかの仕組みと、具体的に何を見て判断すればよいかを、数値例とともに解説します。

金利上昇が返済額に反映されるタイミング(元利均等返済の仕組み)

住宅・事業用ローンの多くは「元利均等返済」という方式で、毎回の返済額(元本+利息)が一定になるように設計されています。この方式では、金利が上がると毎回の返済額に占める利息部分が増えます。ただし、その増加がいつ・どれだけ返済額に反映されるかは契約の条件で決まっているため、「金利が上がった分だけ即座に返済額が増える」とは言い切れません。

つまり「固定金利だから関係ない」とは言えず、固定期間選択型を選んだ場合や、これから新規に借り入れる場合は、「契約時点でどの金利を前提に試算するか」という問題は避けられません。

次の「金利上昇ストレス」機能の試算は、返済額の見直しルールを考慮せず、上昇した金利を全期間に当てはめて年間返済額を出し直す、保守的な上限の試算です。5年ルール・125%ルールがある契約では、実際の返済額の増え方はこれより緩やかになりますが、その分は未払利息や元本の減り方の鈍化として残ります。

シミュレーターの「金利上昇ストレス」機能で見る3つの数値

不動産投資シミュレーターには、入力した物件・融資条件に対して、現在の金利に0%・0.5%・1%・2%を加えた4段階のシナリオを自動で並べて比較する機能があります。この4段階で確認すべき数値は次の3つです。

  1. 年間返済額の増え方:金利が上がるほど、元本は変わらないのに返済額だけが膨らんでいくのが分かります。
  2. 1年目のDSCR:NOI(家賃収入から運営経費を引いた額)を年間返済額で割った値です。1.0を下回ると、家賃収入だけでは返済をまかなえない状態を意味します。
  3. キャッシュフローが初めて赤字になる年(最初に赤字が出るタイミング):金利を上げたシナリオで、どの年から税引前キャッシュフローがマイナスに転じるかを示します。これが契約直後の年であれば、その物件は金利上昇への耐性が低いということです。

この3つを+0.5%・+1%・+2%の各シナリオで並べて見ることで、「今の金利なら問題ないが、2%上がると1年目から赤字になる」といった物件ごとの弱点が具体的に見えてきます。

借入1億円・35年のケースで見る返済額とDSCRの変化(数値例)

「金利が1%上がると返済額はどのくらい増えるのか」を、仮の条件で数値にしておきます。借入1億円・返済期間35年・元利均等返済で、NOI(家賃収入から運営経費を引いた額)を年550万円と仮定した場合の試算は次のとおりです。

金利 年間返済額(目安) 2.0%からの増加 DSCR(目安)
2.0% 約398万円 - 約1.38
2.5% 約429万円 約+8% 約1.28
3.0% 約462万円 約+16% 約1.19
4.0% 約531万円 約+34% 約1.04

この例では、金利が2.0%から4.0%へ2%上がると、年間返済額は約134万円増え、DSCRは1.38から1.04まで下がります。1.0に近いところまで落ちるため、NOIが想定より数%下がるだけで返済をまかなえなくなる余地がほとんどない水準です。この数値は、前のセクションで触れた5年ルール・125%ルールなどの返済額見直しを考慮せず、上昇後の金利をそのまま全期間に当てはめた保守的な上限であり、借入額・返済期間・NOIが変われば数値も変わります。自分の物件の条件で同じ比較をするには、不動産投資シミュレーターに実際の数値を入力してください。

DSCRが下がったときに何が起きるか

DSCRが1.0に近づく、あるいは下回るということは、家賃収入だけではローン返済をまかなえず、自己資金や他の収入から持ち出す必要が出てくるということです。目安として1.2〜1.3以上を確保しておくと余裕があるとされることが多いものの、これは金融機関や融資審査の方針によって基準が異なるため一律には言えません。重要なのは、今の金利でのDSCRだけでなく、金利が上がった場合のDSCRがどこまで下がるかを事前に把握しておくことです。保有期間を通じた50年分のキャッシュフローの見方は不動産投資のキャッシュフローシミュレーションの見方で解説しています。この記事で見ているのは、その中の1つの要素である「金利が変わったときに返済額とDSCRがどれだけ動くか」という感応度の部分です。

物件ごとに金利耐性が違う理由

同じ金利上昇でも、物件によって受けるダメージの大きさは変わります。主な要因は次の2つです。

要因 金利上昇への影響
LTV(融資額の物件価格に対する比率) LTVが高い(自己資金が少ない)ほど借入残高が大きく、金利上昇の影響を強く受ける
残りの返済期間 返済期間が長く残っているほど、利息を支払う期間が長いため影響が大きい

同じ物件でも自己資金を厚く入れて借入額を抑えれば、同じ2%の金利上昇でもDSCRの下がり方は緩やかになります。逆にフルローンに近い条件で購入した物件は、金利上昇のシナリオで最初に赤字年が出やすくなります。

試算の手順

  1. 物件価格・想定家賃・運営経費(管理費・固定資産税等の概算)を入力する
  2. 自己資金・現在の金利・返済期間を入力する(借入額とLTVは自己資金の額から自動で計算される)。表示される1年目の年間返済額とDSCRを確認する
  3. 金利上昇ストレスの4段階(+0〜+2%)を表示し、年間返済額の増え方とDSCRの下がり方を確認する
  4. どのシナリオで最初に赤字年が出るかを確認する
  5. 自己資金を変えて再試算し、LTVの変化と、同じ金利上昇でも耐性がどう変わるかを比較する

マイソク(物件概要書)の画像から価格・家賃などを自動入力できるため、手入力の手間をかけずに複数物件でこの試算を繰り返し、金利耐性を比較検討しやすくなります。

よくある質問

Q. 何%上昇を想定して試算すればよいですか。 A. 決まった正解はありません。過去の金利変動の幅や、借入先の金融機関が示す金利の見通しを参考にしつつ、複数のシナリオ(+0.5%・+1%・+2%など)で試算し、どこまで耐えられるかの幅を把握しておくのが実務的です。最新の金利動向は日本銀行や取引金融機関の公表情報で確認してください。

Q. 固定金利で契約すれば、このシミュレーションは不要ですか。 A. 全期間固定型で契約し、完済までそのまま保有するなら返済額は変わりません。ただし固定期間選択型の場合は、固定期間が終わるとその時点の金利で返済額が見直されます(借り換えとは別の手続きです)。これから新規に借り入れる場合も、その時点の金利が適用されます。固定期間選択型を選ぶ場合や、将来新たに借り入れる予定がある場合は、金利上昇を想定した試算をしておくと見通しを立てやすくなります。

Q. 自己資金を増やせば金利上昇のリスクはなくなりますか。 A. なくなるわけではありませんが、借入額(LTV)を抑えることで、同じ金利上昇幅でも返済額の増加分とDSCRの下がり方を緩やかにできます。自己資金の額を変えて試算し直し、どの程度まで抑えれば耐性が確保できるかを比較してみることをおすすめします。

金利上昇のシミュレーションは、将来の金利を正確に予測するためのものではありません。今の条件で将来ありうる金利上昇に耐えられるかどうかを、契約前に具体的な数値で確認するためのものです。不動産投資シミュレーターで物件情報を入力し、+0.5%・+1%・+2%の各シナリオを実際に試算してみてください。